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日本でも、外資系の金融機関はプレミアムを払わなければ短期金融市場で資金調達が出来なくなった。
 このような金融市場の流動性不足によって金融機関の「資金繰り倒産」が起こらないよう、先進国の中央銀行は、日本銀行を含め、○七年夏以降、とくに○八年に入ると、連日金融市場に巨額の流動性を買オペを通じて供給した。 日本銀行はドル資金の不足している外資系金融機関に対し、買オペで円資金のみならずドル資金まで供給し、外銀プレミアムの縮小を図った。
 巨大証券、巨大生保、巨大住宅公社のソルベンシー危機 ここまでは、資本市場のプレイヤー達が「流動性の危機」に陥っているという話である。 しかし、現実は更に進み、○八年春頃からは、資産の減価が、自己資本以上に膨らみ、債務超過に陥って倒産するという「ソルベンシー(solvensy)危機」の段階に到達した。
 ○八年三月、米国第五位の証券会社Bは、債務超過に陥り、FRBから特別融資を受けた上でJ銀行に買収された。 七月には住宅ローン債権の保証業務を行っている二大住宅公社、FとFも、債務超過に陥ったが、政府から巨額の公的資金の支援を受け、破綻を回避した。
 九月に入ると、債務超過に陥った巨大な生保グループAが、政府から公的資金の投入を受け、倒産を免れた。 証券界では、第三位の証券会社MがBAに買収された。
また第二位のMは、銀行持株会社に変身し(証券会社から銀行に変わり)、日本のM銀行から増資の支援を受けて自力でソルペンシーの回復を図っている。 第一位のGも、銀行持株会社に変わって自力再建中である。
銀行に変わるということは、中央銀行であるFRBの監督下に入り、いざという時にはFRBから短期資金を借り入れることが出来るということである。  そのような中で、第四位の証券会社であるLが、政府からも民間からも資金援助を受けることが出来ず、九月一五日に債務超過で倒産した。

 市場関係者は、A、二大住宅公社、第五位のBの債務超過に対して、政府が公的資金を投人して倒産を防いだので、「巨大な金融機関の倒産は支払不能の連鎖を生み、債務超過ではない金融機関を巻き込んだ連鎖倒産で金融システムを危険に陥れる恐れがある」(too big tofail)との理由で、Lに対しても公的支援を行うものと考えていた。  ところが、第五位のBを援けて、第四位のLを見殺しにしたため、政府は「ダブルースタンダード」だ、「基準不明確」だとして、市場は政府に対して不信感をつのらせた。
これが九月下旬から始まった世界中の株価大暴落の切掛けである。  米国政府は○八年九月中に、七〇〇〇億ドルの公的支援を含む金融安定化法案を議会に提出していたが、血税をウォール街の巨大金融機関の救済に使うことに反感を持つ国民感情を背景に、一部の共和党議員が反対したため、九月末に下院で一回否決された。
これも株価暴落に拍車をかけた。  結局、預金保険の対象拡大などの修正を行って金融安定化法案は一〇月初めに可決、成立したが、今度は七〇〇〇億ドル投入の具体的基準が決まっていないとして、世界中の株価は同時暴落を続けた。
 そして、一〇月一〇日にG7が開かれ、「システム危機を起こしかねない重大な金融機関に対しては、公的資本の注入を含む、あらゆる公的資金援助を惜しまない」という原則が確認され、その後米国、EU、英国、ドイツ、フランスなどでその具体策が公表された。  ここに至って、米国政府の対応の遅れと不明確さに基づく世界的な株価の大暴落はひとまず収まり、各国の株価は底這い状態となった。
 住宅価格下落、景気後退、金融危機の悪循環 金融危機への政策対応は整ってきたが、住宅価格の低下が震源地となって引き起こす景気後退は、○八年中頃から深刻になってきた。 米国の経済成長率は、○八年七〜九月期からマイナスとなり、金融危機→日本の株価暴落住宅価格の下落とくに一〇〜一二月期は年率六・二%、○九年一〜三月期は同六・三%という大幅な落ち込みとなった。
 米国の景気後退のメカニズムと米国政府の対策をフローチャートで描いてみると良く分かる。 住宅価格の下落が震源地となり、一方では消費者ローンや住宅ローンの担保に入っている住宅価格の値下がりで担保切れが起こり、金融機関はローンの回収を急ぎ始めたため、その圧力で家計消費と住宅投資が減少し、景気後退を促進している。
他方では住宅価格の値下がりが、住宅ローンや消費者ローンの担保切れ、焦げ付きを起こして金融危機を引き起こしている。 景気後退はまた設備投資の減少を誘発し、世界同時不況に伴う輸出の減少も加わって、一層深刻になっている。
 更に、景気後退は銀行の不良債権を増やして金融危機を増幅し、金融危機は銀行信用の収縮を招いて景気後退を深刻化させている。 相互に影響し合って悪化する景気後退と金融危機は、住宅に対する需要を更に減らし、震源となっている住宅価格を一層下落させる。
このような悪循環の進行に対し、B政権は前述したように七〇〇〇億ドル(約六七兆円)の公的資金投入を内容とする金融安定化法を成立させ、O政権にも引き継がれて金融危機の進行を止めようとしている。  またO政権は、七八七〇億ドル(約七五兆円)の財政出動(歳出増約五〇〇〇億ドル、減税約二八七〇億ドル)を内容とする景気対策法を議会と妥協し、○九年二月に成立させた。

 恐らくこの大規模な財政出動の効果によって、米国経済は○九年の後半から一〇年にかけて、一時的には小幅のプラス成長に戻るかも知れない。 しかし、その政策効果が途切れたあと、国内経済が自律的な回復軌道に入るには、二つの難問を解決しなければならない。
住宅価格の下落と膨大な不良債権・不良債務の存在だ。 この二つの難問が解決されない限り、米国経済は数年間にわたって低成長にとどまる恐れがある。
議会予算局によれば、景気対策法などで財政赤字は○九年度にGDPの一三・一%に達しており、O大統領は四年間の任期中にこれを七〇%圧縮する計画である。 この公約を守る限り、今後更に大型の財政出動を追加する余地はないのである。
 住宅価格は当分下がり続ける。  二つの難問の一つ、住宅価格から見よう。
住宅価格の下落が止まらない限り、悪循環は続くので、景気後退の圧力は懸かり続け、金融危機は最終的に決着しない。  住宅価格指数には先物相場が立っている。
先物価格は、市場関係者のその時点での平均的な予想であり、経済情勢によって変わっていくので、どこまで信用してよいか分からない。 しかし、一応この先物指数が発表された○九年二月時点では、○六年六月のピークに比べて既に三六%下落した住宅価格は、一〇年中頃までの一年半にわたり、更に一三・六%下がるというのが平均的な予想である。
 つまり、この先物価格を信用すると、米国経済の悪循環メカニズムは、一〇年中頃まで続き、それまでは米国の実体経済は低迷し、金融危機の完全解決には至らないことになる。  広い米国で、住宅価格を政策的に上昇させるのは、ほとんど不可能であろう。
住宅バブルが崩壊し終わらないうちに、次の住宅バブルを発生させるような超金融緩和を実施するわけにはいかない。

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